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教えて住職!!「心を穏やかに保つ指針 後編」

「心を穏やかに保つ指針 後編」〜 六波羅密 精進・禅定・智慧 〜

Wellness Life Channelの新企画「学びの種」は、様々な方にインタビューを行い、「生活を快適にする知恵と知識」をお伝えしていく企画。

インタビューは、寶樹山 常在寺 駒野教晴住職

東京都世田谷区の閑静な住宅街にある寶樹山 常在寺。

1506年室町時代から続く由緒あるお寺の第36代 駒野教晴住職。悩みや苦しみの渦中にいる人々の心の奥深くに救いの言葉を届けることができるかを模索し続ける若き僧侶から“心身ともに健康で穏やかに生きる方法”をみなさんにお伝えしていくシリーズ。

前回(其の四)は六波羅蜜で6つの修行のうち3つの修行“布施・持戒・忍辱”を教えていただいた。そして、今回、六波羅蜜について残り3つの修行について、駒野住職に請う。

前回のおさらい

六波羅蜜、1つ目がお布施。施すことによって安心感を与える。物質的なものではなく、笑顔とか優しい言葉使いで良い。2つ目が持戒。決まり事を守る。公共のルールを守るのはもちろんだが、自分との約束をしっかり守るという修行。3つ目が忍辱。耐え忍ぶ、怒らないということ。

精進 日々の積み重ね 

では、残りの3つについて、

「一つ目が精進の修行になります」

よく“精進します”と言うが、それと同じか?

「そうですね。日々の積み重ね、努力をすることが大事」

「精進というとちょっと重いかもしれないけど、小さいことでもいいので、何か一つでも日々繰り返し努力する」

禅定 一喜一憂しないで穏やかで冷静でいる 

2つ目すなわち5つ目は

禅定(ぜんじょう)という修行になります」

禅定は持戒と同じくあまり聞かないと思うが

「禅定というのは心穏やかに保つ」

「つまり感情の起伏をなるべく起こさない」

駒野住職は「人間万事塞翁が馬」の諺で説明をしてくれた。

〈あらすじ〉

昔、中国に塞翁さんというお爺さんが住んでいて、ある時、飼っていた馬が逃げてしまった。気の毒に思った村人たちが慰めの言葉をかけたが、塞翁さんは、村人たちに「悪いことがあればいいことがやってくるから気長にいいことを待つよ」と言った。
しばらくすると、逃げ出した馬が1頭の駿馬を連れて帰ってきた。
村人たちは、「あの悪いことがあったからいいことありましたね、よかった、よかった」というと、塞翁さんは、「いやでも、いい時があった時こそ油断しないで気をつけないといけない」と言った。翌日、塞翁さんの息子が駿馬から落ちて骨折をした。塞翁さんは村人たちに「こういう時もある」「しっかりと治療して休んでもらって慎ましく生活をします」と言った。今度は、隣村と戦争が起こってしまう。若者が、狩り出されるが、塞翁さんの息子は骨折をしていたので、戦争に行かずに済んだ。


ここからの教訓として、駒野住職は、

「やはり良い時も悪い時も人生山あり谷あり。良い時には浮かれすぎない。悪い時は落ち込みすぎないで常に禅定ですね。穏やかに冷静にいるということで判断ができる」

浮かれすぎても正しい判断はできないし、落ち込んで悲しい時も正常な判断ができなくなる。一定の穏やかな気持ちをもつ。

「いい時もあれば悪い時もあるけれども一喜一憂しすぎないで穏やかに過ごしましょう」

智慧 知識を実践し行動する

いよいよ最後の修行になる。

「最後は智慧の修行になります」

駒野住職から、智慧と知識という言葉の違いがわかりますか?と質問を受ける。

智慧と知識?どちらも同じように使っている感じがするが、いろんなことを学習したり学んだりして自分の記憶に留めるということではないか?

住職曰く、「どちらも吸収するということは同じだが、違いがある」という。

学校で先生に習ったことを全て覚えているかと問われ、覚えてないと素直に答えた。

「人間はやっぱり忘れるんですね。知識というのはその時一生懸命学んで、蓄えるじゃないですか。でも使わなかったらそれは忘れていく」

「知識として習得したものを実際に使ってみる。要するに知識に行動を加える、実践して行動することで知識というのは智慧に昇華されて不思議と忘れない」

できるだけアウトプットをするのが良いと言う。

「困っている人がいたら助けることもできるし、自分が困ったら自分を助ける術(すべ)にもなるし。知識として満足するのではなくそれを実際に使ってみるということが大事。智慧の修行です」

最後に

今回で、“教えて住職シリーズ常在寺編”が終了となる。

最後に駒野住職に知識の種5回シリーズを振り返りメッセージをもらった。

「“知恩報恩”を紹介させていただこうかと思います」

知恩報恩は仏教の教えであり、恩に知り、恩に報いると。恩を知るというのは、我々は、日頃、たくさんの方々のお陰様で生活をしています。それは、目に見えるものもあれば目に見えないご恩もたくさんあって、そういったご恩に助けられお陰様で生活をしているということを知る。つまり、感謝をするということですね」

「それに対して報恩というのは、感謝をするということだけで終わってしまうのではなくて、そこに対してどう報いていくのかということが大事、大切だっていうことを教えてくれている言葉になります」

「日頃、本当に多くの方のご恩をいただいて、そのご恩返しをするということはとても大切なことでこれも仏教の大切な考え方の一つ」

「もはや人生というのはこの繰り返しで、巡り巡っていく。人との大切なつながり。この気持ちを持って生活を送っていただきたいなというふうに思います」

3年前になぜおとなの寺子屋を始めたか

「仏教というと死を連想する、亡くなった方々に対してのものというイメージはあると思うんですけども、亡くなった方々にお経を上げる、ご供養するというのはもちろん我々の大切な仕事の一つです」

「仏教というのは、この現世生きている我々は、楽しいことや幸せなことばかりじゃなくて、四苦八苦、辛いことがあるじゃないですか。そういった時にその苦しみとどう向き合っていけばいいのか、よりこの人生を心穏やかに、心豊かに過ごしていくのは、どうすればいいのかということを説かれているのがそもそも仏教になります。それを伝えるためにこのおとなの寺子屋を始めたんです」

「今年、私も住職を先代から引き継がせていただきましたけれども、これからの常在寺は亡くなった方々のご供養はもちろん大切なことですけれども、今、この現世に生きる方々とどうやってお寺としてお付き合いさせていただけるかと。どうすれば、みなさまのお役に立てるかと。生きている方々とどう関わりあっていくかということを大切にしていこうというのがこの常在寺のこれからのテーマとしております。ぜひ、ご興味があれば、常在寺に遊びに来ていただいてお話をさせていただければなというふうに思っております」

編集後記

お釈迦様が生まれたときに言われた言葉

天上天下(てんじょうてんが)

唯我独尊(ゆいがどくそん)

三界皆苦(さんがいかいく)

吾当安此(ごとうあんし)

苦悩渦巻く三界にいながら、誰もが本当の幸福になれるという。

今、この人生で誰でもが幸せになれる。私たち人間が生まれてきた本当の意味であり、仏法を聞けば、心から喜べる人生が開かれていますよというお釈迦さまの想いが、駒野住職の語りから脈々と引き継がれ後世に託されていることに気づかされた対談であった。

今回は御住職に「六波羅蜜」の教えの中の 精進・禅定・智慧 についてお話いただきました。​

精進は、サンスクリット語、パーリ語で viriyaヴィーリヤ と言い、一般に「エネルギー」「勤勉」「熱意」「努力」と訳されますが、​
これは「強い男性」「男らしさ」という意味でもあり、ヴェーダ文献ではその意味から、「勇敢」「英雄」という意味でも使用されています。​

雑念を去って一つのことの集中し、ひたすら励む積極的な姿勢のことですが、日本には古来から、人畜の死や出血、出産など異常な生理状態を指して不浄、穢れとした概念があったので、浄化の実践のために衣服、食事を通じて身心を清めること、俗縁を断ち切って清浄にし、仏門の生活を送ることもいうようになりました。​
食事においては特に仏教で殺生を禁じたことから魚、鳥、獣など動物性の食事を取ることや、酒を断ち、五葷(ごくん)と呼ばれる煩悩を刺激する臭いの強い野菜(ネギ類など)も避け、また調理に使う火も普段の家族で使うものとは別の清浄な火を使うなど、細部に渡って慎みとして徹底されました。それらの工夫を施し煩悩を避ける目的の調理された料理を精進料理といいます。(wikipediaより引用)​


禅定は サンスクリット語では dhyāna ディヤーナと言い、心を一定の穏やかな状態に保つことで、心がブレずにこの状態を保ち続けると​
三昧サマーディと呼ばれます。この禅定については、仏陀が弟子のアーナンダに「禅定の段階」について語っています。​

ヨーガスートラにも「ヤター アビマタ・ディヤーナーッドヴァー」という 一文があり、​
心惹かれる対象に集中し、瞑想することによって、心穏やかに澄み切った状態になります、と書かれています。​

智慧はサンスクリット語では prajnaプラジュニャーと言い、般若と同じ意味です。ですから、般若心境の「般若」とは「智慧」という意味なのですね。​
インド哲学上の「智慧」とは、簡単にいうと、「宇宙の全システムの理解」とでも言いましょうか。非常に奥深いとも単純とも言える、​
宇宙の成り立ち=私たちの心身や輪廻のすべてを知ることなのです。​

インド哲学のメソッドで”整える”心と身体の健康

パーソナルカウンセリング
アーユルヴェーダ 体質別 食事バランス調整・生活習慣アドバイス
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